水槽には熱帯魚だけではなくミナミヌマエビなど別の生き物を入れると、自然らしさが高まって、飼育が楽しくなります。エビの仲間は見栄えだけでなく、水槽を綺麗にしてくれたり、飼育者にとっても助かる存在です。
今回はそんなミナミヌマエビについて脱皮や水草、水槽の選び方、混泳相手、寿命など飼育方法を詳しく紹介していきます。
ミナミヌマエビの特徴
ミナミヌマエビは台湾や中国、日本の静岡県から西にむかって河川や沼地に分布しているエビの仲間です。エビの仲間は魚やタガメ、ヤゴなど天敵が多く、水草や流木などの隠れ家が多い場所に生息しています。
体色は少しくすんでおり、透明度は高くありません。
体の大きさ
ミナミヌマエビの大きさは2cm~3cm前後の小型のエビです。体が大きい個体はメスであることが多いです。
体を大きくしたい時は水温を26度にして熱帯魚の人工飼料を与えます。体を小さくしたい時は水温を22度にして食欲を抑えましょう。
寿命の長さ
ミナミヌマエビの水槽での寿命は平均して1年半です。野生のミナミヌマエビは春に誕生して、翌年の春に産卵、同年の夏の暑さで死んでしまいます。
しかし、水温と水質が一定に保たれている屋内飼育では2年ほど生きることがあります。それでも繁殖回数が多いと死にやすくなるので、繁殖で生命をつないでいくか、1匹を大事に育てていくか決めておきましょう。
ミナミヌマエビの生態
ミナミヌマエビは水中に発生しているコケや微生物を食べるために、手先をせわしなく動かしています。水草や石の隙間など狭い場所も綺麗にしてくれるので、小型熱帯魚水槽の掃除役として重宝されています。
繁殖も簡単なので、水槽内で親から子へと命が繋がれていく様子も観察できて、とても楽しいですよ。
脱皮をして大きくなる
ミナミヌマエビは体が大きくなったり、水質や水温の変化でストレスを感じると脱皮をします。輸送中に脱皮することも珍しくありません。
脱皮の頻度は月に1回ほど行われており、抜け殻はカルシウム源としてエビたちが食べてしまいます。脱皮の頻度が増えているときは水質悪化しているということなので、水換えをしてみましょう。
脱皮はエネルギーを使う活動なので、そのまま動かなくなって死んでしまうこともあります。餌をしっかり食べているか、水が悪くなっていないか管理しておきましょう。
繁殖の時期と繁殖方法
ミナミヌマエビの繁殖は暖かくなる4月〜8月の時期に行われます。
交尾を終えたメスは卵を腹部に抱えており、たえず新鮮な水を送り続けます。抱卵から1ヶ月ほどで稚エビが生まれてきます。
繁殖はとても簡単で初心者でも十分に狙えるほど簡単です。水温を24度前後にして、5匹ほど水槽にいれて、隠れ家になる水草をたくさんいれておけば自然と繁殖していきます。
ミナミヌマエビの繁殖方法で詳しく紹介しています。
ミナミヌマエビの入手方法
ミナミヌマエビを入手するには、お店で購入する方法と自分で捕獲する方法の2つがあります。
値段と販売場所
ホームセンターなどの店頭だと1匹50円、ネット通販だと100匹のまとめ売りで1,000円ほどの値段で販売されています。人気があるエビなので、簡単にみつけることができます。
他にも釣具屋で餌として販売されており、スジエビなども混ざっていますが、g単位の販売でうまくいけば1匹15円ほどで入手できます。
野生で採集する
近くに河川と水草があれば、大きな網でガサガサとすることで大量のミナミヌマエビを手に入れられることがあるのでおすすめです。私は河川に捕獲しにいき、一度網をいれただけで30匹ほどのエビを捕まえることができました。
ミナミヌマエビの飼育に必要な設備
ミナミヌマエビの飼育に必要なものを紹介していきます。飼育には基本的な飼育セットがあれば問題なく、初期費用は3万円もあれば十分です。
必要な水槽の大きさ
ミナミヌマエビは体が小さいので春などの暖かい時期であればコップほどの大きさでも飼育できますが、水温の変化が激しいので、最低でも30cm水槽を用意してください。
飼育数の目安は30cm水槽で20匹、45cm水槽で30匹、60cm水槽で100匹です。エアレーションがない環境で飼育するときはこれの1/8の数に抑えておきましょう。
ろ過フィルターは無くてもいい
ミナミヌマエビは酸素欠乏に強いので、ろ過やエアレーションなしでも飼育することができます。そのときは水草をいれてあげてください。
過密飼育するときはろ過フィルターは必須です。フィルターの種類はなんでもいいですが、エビが吸い込まれないように、吸込み口にスポンジをつけておくと安心です。
45cm以下の水槽なら外掛けフィルターや底面フィルター、60cm以上の水槽ならろ過力が強い上部フィルターを使いましょう。
泳ぐのは苦手なので水流は弱くしてあげてくださいね。
編目が細かいあみ
網は水槽を移動させたりゴミを取り除く時に使います。体が傷つきやすいので、網目が細かいものを選んでください。
滑らないように底砂を敷いておく
ガラス面では滑って歩きにくいので、底砂が必要です。ただ、流木や水草を多く入れている環境なら無くても大丈夫です。
水質に影響がない種類であれば問題ないので、市販の田砂や大磯砂を使いましょう。
生存率を上げるために、飼育水の取り扱いに要注意
ミナミヌマエビは水質の変化に敏感なので、水質の悪化や掃除で水換えをするときに注意しなければいけません。
ここで失敗すると飼育を始めて3日程度で死んでしまうことも珍しくありません。
水槽の立ち上げ方法
水槽の立ち上げる前に知っておいて欲しいことは、最初はフンや食べ残しなどの有害物質を無害な物質へ変えてくれるバクテリアがいないことです。この状況でたくさんの生き物を飼育すると水質悪化が早く、すぐに住めない環境になってしまいます。
まずは体が丈夫な魚(パイロットフィッシュ)を飼育してバクテリアを繁殖させてから、本命のミナミヌマエビを投入すると安全です。
- 水槽の置き場所を決める
- 照明、フィルター、底砂、ヒーターをセットする
- カルキ抜きした水をゆっくりと入れていく
- フィルターの電源を入れて水の濁りを取る
- パイロットフィッシュを1ヶ月飼育してバクテリアを増やす
- ミナミヌマエビを少しづつ増やしていく
水槽の立ち上げ方でも詳しく紹介しているので、ご参考ください。
水質の変化を避けるための水合わせ
水槽を準備して、水温を調整したら、ミナミヌマエビを入れる準備が完了です。
ここでも注意が必要で、ミナミヌマエビは水温や水質の変化に弱いので、購入してきたミナミヌマエビをすぐに水槽に入れるとphショックで弱り、最悪に場合は死に至ります。そんな時は水槽の水に慣らすために水合わせが必要です。
水合わせの方法はとても簡単で、ミナミヌマエビが入った袋を水槽に浮かべて、水槽の水をいれて捨てる行為を2時間かけて4回ほど繰り返してください。
水質を維持するための水換え
ミナミヌマエビは水質悪化した環境に弱いので、水質を維持するために毎週1/3ほど水換えを行います。
水を抜く前に、ガラス面に付着した苔をスポンジでとったり、ホースを使って底砂にたまったフンごと水を吸い上げましょう。
水温や水質差が大きい水を一気に入れると危険なので、水を抜くときは一気に抜いても良いですが、新しい水を足すときは少量ずつ、最低でも30分ほどかけて行ってください。
水槽を掃除する
半年に1回は水槽の大掃除を行ないます。
水槽をきれいに掃除しきるとせっかく繁殖したバクテリアがいなくなるので、バクテリアが多く繁殖している場所は飼育水で軽く洗って、それ以外の場所は水道水でしっかりと洗います。
バクテリアの数が少ない、水槽のガラス面、石、流木、ヒーター、水温計、水草はそのまま水道水で洗います。バクテリアが多く繁殖しているフィルターのスポンジや底砂は飼育水で洗い流します。どうしても洗いたいときは、スポンジを洗って1週間後に底砂を洗うなど日にちをずらしてください。
環境の変化を抑えるために飼育水の1/3は残しておき、掃除が完了した水槽に戻します。
ミナミヌマエビの飼育方法
ミナミヌマエビは水の管理ができていれば、餌は自然に増えるコケを食べてくれますし、ほとんど手間いらずです。
飼育に適している水温と水質
ミナミヌマエビに適している水温は20度〜26度です。
低水温に強いので、冬でも水が凍らなければ越冬することが出来ます。しかし、観賞用に飼育するのであれば、水槽用のヒーターで保温してください。
夏の暑さに弱いので、水温が30度を超えるようなら冷却ファンをいれましょう。
適している水質はph6.0〜7.0の弱酸性〜中性です。水質の適応能力は高いので神経質になる必要はありません。
夏や冬の対策方法についてはミナミヌマエビの水温で詳しく紹介しているので、ご参考ください。
水草は隠れ家にもなり、とても大切
ミナミヌマエビにとって水草はとまって休憩をしたり、身を隠したり、コケを食べたりするために必須の存在です。特に魚に攻撃されやすいので、混泳するときは必ずいれてあげましょう。
おすすめの水草は安価で飼育が簡単なマツモやアナカリス、ウィローモスです。特にウィロモーモスは新芽がミナミヌマエビの餌にもなるので餌不足対策に効果的です。
餌不足になると葉の細い水草を食べるようになります。体が小さいので大きな食害にはなりませんが、そのような行動が見れたら熱帯魚の餌をあげましょう。
水草導入の注意点としては、ショップで販売されている水草には農薬をまかれていることがあります。熱帯魚には影響ありませんが、ミナミヌマエビには大きな影響があります。残留農薬の管理をどのように行なっているか確認しておきましょう。
水草についている鉛もきちんと外しておいてくださいね。
餌はコケや魚の食べ残しがメイン
ミナミヌマエビは雑食性でコケや魚の死骸、人工飼料などなんでも食べます。基本的には水槽に発生したコケを食べているので、水草をたくさん植えている水槽であれば餌をあげる必要がありません。
苔がほとんど生えていない時には、週に1回、熱帯魚の人工飼料を与えてくださいね。
ミナミヌマエビにおすすめの餌で詳しく紹介しているので、ご参考ください。
屋外でも飼育できる
ミナミヌマエビは水温の適応範囲が広く、屋外での飼育に適している生き物です。水が完全に凍らなければ越冬することもできるため、年中を通して屋外飼育をすることができます。
必要な酸素量も多くないため、飼育数を大幅に増やさない限りは、水草をいれておけば、エアレーションも必要ありません。
むしろ屋内飼育よりも屋外飼育に適しており、日光が強いため餌になるコケが増えやすく、どんどん繁殖していってくれますよ。特にメダカのビオトープにいれるとメダカの食べ残しを食べたり、水槽の掃除役として活躍してくれます。
屋外飼育の注意点はメダカと同じですので、メダカビオトープの作り方をご参考ください。
混泳に向いている大人しい性格
ミナミヌマエビは温和な性格で、魚を襲うことはないので、水槽での混泳にむいています。しかし、特にミナミヌマエビは体が小さく、エビ類を好物にしている魚は多いので、混泳相手には注意が必要です。ちょっかいをかけられることも多いので、必ず隠れ家になる水草をいれてあげてください。
混泳水槽では稚エビを育てるのは困難なので、できたら運がいいくらいに思っておきましょう。
無加温で飼育できる相手だとメダカ、どじょう、ヤマトヌマエビ、タニシがおすすめです。
熱帯魚だとグッピー、プラティ、コリドラス、小型のグラミー、ビーシュリンプ、ネオンテトラなどの小型種がおすすめです。
大型になる金魚やエンゼルフィッシュ、エビが大好きなアベニーパファー、攻撃性の強いスマトラやベタは混泳相性がよくありません。
かかりやすい病気と死因
ミナミヌマエビは一度病気になると、治療が難しく、高確率でそのまま死んでしまいます。なによりも予防を大切にしてください。
phショック | 死因で一番多いのが環境の変化に適応できずにphショックで死んでしまうことです。影響があるときは水槽に導入してから2週間以内に死んでしまいます。水合わせをしっかりと行なってあげてくださいね。 |
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寿命 | エビが1匹だけ死んでしまったという時には寿命である可能性が高いです |
脱皮不全 | 脱皮に失敗して抜け殻が体にくっついた状態になっています。軽度であれば時間をかけて自分で剥くので放置しておきましょう。脱皮不全がなんども起こっているときは酸素不足か水温、水質が適切でないことが考えられます。環境の改善点がないか考えてみてください。 |
ミナミヌマエビについてまとめ
今回は水草水槽のタンクメイトとして大人気のミナミヌマエビについて紹介させていただきました。熱帯魚を飼育し始めるとコケに悩むことが出てくると思いますが、ミナミヌマエビはそんなコケを食べてくれる頼もしい生き物です。
そんなきっかけで飼育し始めますが、手先をつまつまと動かす姿はかわいく、繁殖をしてくれたりと、どんどんミナミヌマエビの魅力にはまっていくでしょう。ぜひ熱帯魚の飼育に慣れてきたら挑戦してみてくださいね。
同じ水槽のコケ掃除役としてヤマトヌマエビというエビも人気です。こちらの記事で違いを紹介しているので、ご参考ください。
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