ブラインシュリンプは熱帯魚の稚魚の餌としてなくてはならない生き餌です。しかし、稚魚の育成をしたことがない人にとってはブラインシュリンプがどういう生き物で、どういうメリットがあるのかわかりにくいのではないでしょうか。
今回はそんなブラインシュリンプについて、稚魚育成に選ばれている理由や乾燥卵の販売場所、孵化率をあげる方法など詳しく紹介していきます。
ブラインシュリンプとは?
ブラインシュリンプは正式な名称はアルテミアという生き物です。アルテミアは数億年前から生息しており、その種類の一部がブラインシュリンプと呼ばれています。生息地は幅広く、世界中の塩水湖に生息しています。淡水の生き物ではないので、淡水魚水槽にいれると1日で死んでしまいます。
無数の足で水中をかくように泳ぎ回ります。成体でも大きさは1mmにもならない小型の甲殻類です。
日本の水田に生息しているホウネンエビと非常に姿が似ていることから、ホウネンエビは和製ブラインと呼ばれることもあります。
寿命の長さ
ブラインシュリンプの寿命は平均して2ヶ月になります。孵化後1ヶ月で親エビになって繁殖できるようになります。淡水で飼育すると、水質があわないので1日も経たないうちに死んでしまいます。
稚魚の餌として使えるブラインシュリンプ
ブラインシュリンプは稚魚の生存率をあげるためにかかせない餌になります。孵化したばかりのブラインシュリンプは体長で0.4mmほどであり、稚魚の小さな口でも食べられる大きさで生まれてきます。
稚魚は人工飼料を餌と認識することがなく餓死してしまうことが多いのですが、ブラインシュリンプは生き餌で動く姿が食欲を刺激してくれるので食べてくれる可能性が高くなります。
栄養価も非常に高いので、稚魚がすくすくと育ってくれますよ。栄養価の高さから親魚を成熟させるのにも役立っており、繁殖率をあげるために使われるほどです。
孵化して24時間経過すると0.8mm、2週間で1.0mmまでに成長します。親魚にあげるときは成長速度の効率がいい、孵化から24時間後にあげるといいですよ。
稚魚餌としてのデメリットは?
ブラインシュリンプは海水で生活しているため、淡水魚水槽では1日も待たずに死んでしまいます。
熱帯魚の稚魚は胃が小さいので一度に食べきれる量が少なく、1日5回にわけて少量をあげていくのが理想とされています。ブラインシュリンプは淡水水槽にいれていると死んでしまうので、稚魚が食べたい時に餌が十分にある状態を作ることができません。
反対にミジンコは同じくらいの体長で淡水でも生きていけるので、水槽内に多めに放って置いて、いつでも食べられる稚魚の餌として使うことができます。しかし、ブラインシュリンプのような乾燥卵が販売されておらず、入手が難しい点があげられます。
乾燥卵の入手が容易な点と、孵化が簡単なことからブラインシュリンプが選ばれる理由になっています。
ミジンコの飼育と繁殖方法で紹介しているので、近くに池がある人はミジンコに挑戦してみてください。
ブラインシュリンプの卵の値段は?
ブラインシュリンプの卵はブラインシュリンプエッグスという名前で20gを500円前後で販売されています。ホームセンターや熱帯魚専門店、ネット通販など多くの場所で販売されています。
マニア向けになりますが、150g前後の大容量の缶タイプのものがネットで販売されています。主には米国産、ベトナム産、中国産の3つがあります。それぞれの産地で孵化に必要な塩分濃度が変わりますので、説明書を読んでおきましょう。
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ブラインシュリンプが孵化しやすい環境を準備しよう
ブラインシュリンプを孵化させるときに気になるのが孵化率です。すべての卵が孵化してくれるわけではなく、初心者だと10%ほどしか孵化しないこともあります。
ここでは孵化に大切な6つのポイントを紹介しますね。
チェックポイント
- 飼育水には塩分が必要
- 水温は15度以上にする
- 十分な酸素を供給する
- 水量を多くする
- ゆるやかな水流を作る
- 時間通りに光を当てる
飼育水の塩分濃度
ブラインシュリンプの卵は塩分濃度2%の水で孵化します。水1リットルに対して塩20gが目安です。カルキを抜いた水道水に岩塩を混ぜてあげましょう。この塩分濃度は稚魚にとって危険なので、餌としてあげるときには塩水を完全に捨てる必要があります。
水温は15度以上にする
水温は15度〜25度にしましょう。水温が低いと孵化が遅くなり、高いと早くなります。25度前後だと24時間で孵化しますよ。冬場は水槽用のヒーターを入れるか照明の下で孵化させましょう。
十分な酸素を供給する
卵はとても小さく、少しの量でたくさんのブラインシュリンプが生まれてくるため、一斉に孵化すると酸欠で死にやすくなります。
エアレーションをしないときは、水深が2cm程度になるように浅い容器で、少量のブランシュリンプを孵化させましょう。
水量を多くする
孵化させるには新鮮な水が必要になります。水量が少ないほど水が汚れやすくなるので、孵化率が低くなってしまいます。孵化しない卵や殻はすぐに取り除くようにしましょう。
ゆるやかな水流を作る
新鮮な水を送り込むためにゆるやかな水の流れが行き渡っている必要があります。エアレーションを使うと酸素量も増やせるので一石二鳥です。
時間通りに光を当てる
必須の条件ではありませんが、日照時間を日の出・日の入りに合わせてあげると孵化率が上がります。水温に注意しつつ、太陽の元に置いておくか、照明の光を当ててあげましょう。
ブラインシュリンプの孵化器を紹介!
ブラインシュリンプが孵化すると、孵化した幼生、卵の殻、孵化しなかった卵の3つが発生します。幼生以外は水槽内にいれてしまうと水質悪化の原因になるで、孵化器にはそれらを分離する機能があると手間が少なくなります。
孵化させる容器は以下の2つのどちらかを使うことがほとんどです。孵化率を高くするには慣れによるところが大きいので、どちらの方が孵化率が高いということはありません。
容器が過密にならないように、水1リットルに対して卵は3g以下にしておきましょう。
ニチドウ ハッチャー24
ブラインシュリンプを沸かすための専用の孵化装置です。エアレーションが付属されており、全体に水流が行き渡る設計になっています。卵の殻と幼生が分離する仕組みになっているので、殻を分ける手間がなく孵化が楽になります。
ハッチャーでの沸かし方
- ハッチャーに海水をいれる
- 付属のエアレーションをセットする
- 乾燥卵をいれて、エアレーションを動かす
- 24時間後に孵化しています。
- エアレーションを止めると幼生が下に集まるので、スポイトで回収する。
道具が無いなら皿式に挑戦!
皿式とは高さが5cmほどの低いお皿に卵と2cmほどに薄く海水をいれて孵化させる方法です。
水と空気が接する面が広いので、酸素が供給されやすくなります。それでも一度にたくさん孵化させると酸欠になるので、孵化数は少なめにしておきましょう。卵の殻などは分離されないので、幼生だけをスポイトで回収する必要があります。
皿式での沸かし方
- お皿に2cmほどの深さになるように海水を入れる
- 使いきれる量の乾燥卵を入れて、照明が当たる位置に置いておく
- 24時間後に孵化する
- スポイトで幼生を回収する
皿式で孵化させている時、幼生は光に集まりやすい習性があるので、光をつけて集まったところを回収しましょう。
ブラインシュリンプの与え方と濾し方(こしかた)
ブラインシュリンプを稚魚に餌として与える時には、孵化させた海水を洗い流す必要があります。この作業を塩抜きといって、ブラインシュリンプをスポイトで回収して茶こしやコーヒーフィルターで海水を落とします。その後、水槽の飼育水で洗い流してから稚魚の餌として与えることができます。
茶こしはエムティートリマツ製品がブラインシュリンプ用としてマニアの間で有名です。
淡水水槽で食べ残すと死んでしまい、水を汚す原因になるので、食べきれる量を与えてください。目安は1日3回、1〜2分で食べきれる量にしてあげてくださいね。
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ブラインシュリンプを孵化させるときの注意点
チェックポイント
- 孵化しない原因
- 乾燥卵の保存方法
- 孵化したブラインシュリンプが余ったらどうする?
孵化しない原因
孵化の基本となる水温、塩分濃度、エアレーションを守っている時に孵化しない原因として多いのは、卵が古くなっている可能性があります。
一度48時間程度は様子を見て、それでも孵化しない時は新しい乾燥卵を購入してきましょう。
乾燥卵の保存方法
ブラインシュリンプの乾燥卵は高温多湿を避けて保存しましょう。理想的な場所は冷蔵庫などの乾燥した4度前後の空間になります。冷蔵庫は結露でカビが生える可能性があるので、小分けにして保管したほうがいいですよ。
常温だと半年以内、冷蔵庫保存だと3年以内には使用するようにしてください。期間が長くなるほど孵化率は下がってしまうので、はやめに使い切るようにしてくださいね。
孵化したブラインシュリンプが余ったらどうする?
孵化したブラインシュリンプは適正な方法で保存することで翌日も使用することができます。生かしておくためには、孵化した時の水をそのまま飼育水として、水温を20度前後に保ってください。酸素量が重要になるので、エアレーションをまわすか水深が浅い容器に移動させておきましょう。
そのまま冷蔵庫にいれることで一時的に仮死状態にする方法もあります。
生まれてから日にちがたつほど栄養価がブラインシュリンプの成長に使われて、失われていくので、早めにあげるようにしてください。
ブラインシュリンプの飼育方法
ブラインシュリンプは餌として使うだけではなく、飼育をして楽しむことも出来ます。
飼育する時はプラケースやバケツなどの飼育容器と塩分濃度2%(水1リットルにたいして2gの塩)の水が必要になります。淡水での飼育はできません。
餌は植物性プランクトンなので、飼育容器とは別に水をはったバケツに熱帯魚の餌を入れておいて、1週間ほど日光にさらしておくと自然と苔が繁殖して、そこに植物性プランクトンが発生し始めます。
なので、ブラインシュリンプの飼育容器も屋外に置いておく方が、自然と餌が発生して飼育がうまくいくことがあります。そのときは水が蒸発して塩分濃度が上昇しないように注意しておきましょう。
室内で飼育したい時は、先ほどの方法で植物性プランクトンを発生させるか、植物性であるプレコの人工飼料を水に溶かしたものをあげるといいですよ。
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孵化が手間なら冷凍シュリンプも効果的!
ブラインシュリンプは乾燥卵だけではなく、少量のパックに包まれた冷凍されたものがクリーンブラインシュリンプという名前で販売されています。解凍方法はとても簡単で、水をはった容器につけておけば溶けて使えるようになります。保存も簡単で冷蔵庫にいれておけば長期間保存できます。
製品には2つあって、体長1mmほどの親エビが冷凍されている商品と、稚魚向けに0.4mmの稚エビが冷凍されているベビーブラインシュリンプがあります。稚魚餌には後者を使いましょう。しかし、栄養価や食いつきは生き餌に劣るので、稚魚の餌として最高のものではありません。
人工飼料への食いつきが悪い小型熱帯魚向けの餌として利用するといいですよ。
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