エンゼルフィッシュは熱帯魚の代名詞ともいえる魚で、高さのある体型と長いヒレが優雅さをかもしだしています。それに加えて、ゆったりと水槽を泳ぎ回るので、存在感のある熱帯魚です。
今回はそんなエンゼルフィッシュの生態や特徴、必要な水槽の大きさ、餌など飼育方法について詳しく紹介していきます。
エンゼルフィッシュの生態と特徴
エンゼルフィッシュは熱帯魚のシクリッドの仲間です。観賞魚としての歴史は長く、初めて日本に輸入されたのは1930年代といわれています。
大きなひれでゆったりと泳ぐ姿が天使(エンジェル)のように見えることからエンゼルフィッシュと名付けられました。
多くの熱帯魚が生息している南米のアマゾン川に生息しています。泳ぐのが苦手なので、水草や流木などの隠れ家が多く、流れが穏やかな場所で群れで生活しています。
大人しい性格
エンゼルフィッシュはおとなしい性格をしています。しかし、繁殖期になると縄張り意識が強くなって攻撃的になるため、春から夏にかけては要注意です。この時はエンゼルフィッシュ同士で喧嘩をするため、単独飼育の方が望ましいです。
体もそれなりに大きくなりますので、口に入る大きさの小型熱帯魚は食べてしまいます。水槽で混泳させるときは注意してください。
体の大きさ
エンゼルフィッシの大きさは平均で12cm〜15cmです。個体差が激しく10cmの大きさにもならない個体もいれば、最大で20cmを超える個体もでてきます。
縦方向だと20cm近くになるので、魅力を引く出すためにも高さのある水槽で飼育してあげてくださいね。
寿命の長さ
エンゼルフィッシュの寿命は平均して5年〜7年です。病気やストレスに弱く、水質悪化が進むと3年程度で死んでしまうこともあります。
長期間飼育するには、飼育数を少なくして、低水温で餌の量を減らします。水質は維持できるように水量が多い大きな水槽で飼育しましょう。
エンゼルフィッシュの種類
エンゼルフィッシュにはごく普通に流通しているスカラレ種、伸長するとヒレとやや褐色がかかる体色が魅力のアルタム種、ブラジル南部に分布するドゥメリリー種、ペルー、コロンビアに分布するレオポルディ種の4種類が原種のエンゼルフィッシュとして知られています。
他にも品種改良が盛んに行われており、カラーバリエーションが豊富でたくさんの種類からお気に入りの1匹を選ぶことができますよ。
エンゼルフィッシュ
分布 | アマゾン河上・中流域 |
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体長 | 14cm |
販売価格 | 500円〜3,000円 |
エンゼルフィッシュはグッピー、ネオンテトラとならぶ熱帯魚の代名詞と言われる種類です。体色は銀褐色をしており、やや青みがかったり赤みがかったりと個体によってさまざまです。
次に紹介するアルタムエンゼルと比べると体高は短く、すこし丸みを帯びています。
アマゾン河に生息していますが、一般的に販売されているエンゼルフィッシュはシンガポール、香港、中国で養殖されたものがほとんどです。60cmの水槽を用意してあげれば、他の熱帯魚とも混泳を楽しむことができます。
アルタムエンゼルフィッシュ
分布 | コロンビア、オリノコ川 |
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体長 | 13cm |
販売価格 | 500円〜10,000円 |
アルタムエンゼルは上下に長く伸長する背びれ、尾びれとやや赤褐色を帯びる色が魅力的な種類です。最も人気が高く、水草の多い水槽で綺麗に映えます。
幼魚なら500円程度、成体で発色のいい個体だと10,000円を超えることがあり、コレクション性が高い種類と言えます。
水質に敏感な熱帯魚なので、輸入状態が悪ければすぐに弱ってしまいます。購入時にはヒレがピンとしていて元気に泳いでいる個体を選んでくださいね。
エンゼルフィッシュの中では水質の変化に敏感で飼育が難しいため、水量が多い60cm以上の水槽で飼育して、過密飼育は避けてください。
デュメリリエンゼルフィッシュ
分布 | アマゾン川 |
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体長 | 12cm |
販売価格 | 3,000円 |
デュメリリエンゼルフィッシュは最も体が小さいです。青色がかった銀色の体色をしており、原種のエンゼルフィッシュのなかでは最も綺麗な種類と言われています。体型は全体的にまるみを帯びており、かわいらしい印象を受けます。
輸入量が少ないので、購入するときはネット通販か熱帯魚専門店を探しましょう。
エンゼルフィッシュ(品種改良)
エンゼルフィッシュは愛好家の手によって多くの改良品種がおり、さまざまな色合いを楽しむことができます。主に体色に注目した個体と、ヒレの形状に注目した2種類の特徴的なエンゼルフィッシュがいます。
体色では全身が真っ黒になったブラックエンゼル、黒のまだら模様を散在させたマーブルエンゼルフィッシュがよく知られています。
ヒレの形状に注目したエンゼルだと背びれ、尾びれ、尻びれが大きくなったベールテール・エンゼルがおり、このタイプも多くのカラーバリエーションが存在しています。特に背びれの先端から尻びれの先端まで20cmを超える個体もおり、大型水槽で大きな存在感を発揮してくれます。
エンゼルフィッシュの飼育に必要な水槽と設備
エンゼルフィッシュは熱帯魚飼育に使われる一般的な水槽で飼育することができますが、体が大きくなるので、ネオンテトラなど小型熱帯魚を飼育している水槽では狭くなってしまいます。
初期費用では5万円ほどみておくといいですよ。
水槽の大きさと飼育数
エンゼルフィッシュを飼育する水槽の大きさは、最低でも60cm水槽が必要になります。尾びれと尻びれの良さを最大限に活かしたいのであれば、90cm水槽を用意してください。
幼魚のうちは45cmの小型水槽でも飼育できますが、成長するにつれて体高もでてくるので、始めから大きい水槽を用意することが大切です。
飼育数は60cm水槽で7匹、90cm水槽で15匹、120cm水槽で20匹が目安になります。
ろ過フィルター
エンゼルフィッシュの水槽のろ過フィルターは水槽の大きさに合わせて選びます。
45cm以下の小型水槽であれば安価で設置しやすい外掛けフィルターがおすすめです。60cm以上の大型の水槽を使う時は上部フィルターを使いましょう。
泳ぐのが得意ではないので、水流は弱めにしてあげましょう。水流を強くすると泳ぐのに体力を使って弱りやすくなってしまいます。
照明
照明を設置する事で鑑賞をしやすくしたり、水草の成長、発色を良くする効果があります。光量が強い2灯式がおすすめです。
エンゼルフィッシュの飼育方法
エンゼルフィッシュは比較的丈夫で飼育しやすい熱帯魚ですが、導入初期の1ヶ月は注意が必要です。
水槽の立ち上げ方法
立ち上げたばかりの水槽には、フンや餌の食べ残しなど有害物質を無害なものに分解してくれるバクテリアがおらず、その状態で魚を飼育しているとすぐに棲めない環境になってしまいます。
それを防ぐために、実際に水質悪化に強い魚(パイロットフィッシュ)を飼育して、バクテリアを増殖させる必要があります。
バクテリアが増加して水質が安定しても、最初にたくさんの魚は入れずに、徐々に増やしていってください。
水槽立ち上げの手順
- 水槽の置き場所を決める
- 水槽と水槽台をセットする
- 照明、フィルター、底砂、ヒーターをセットする
- カルキを抜いた水を入れる
- フィルターを稼働させて水の濁りをとる
- パイロットフィッシュを1ヶ月飼育してバクテリアを繁殖させる
- エンゼルフィッシュを少しづつ増やしていく。
アクアリウム水槽の立ち上げ方で詳しく紹介しているので、ご参考ください。
水槽のレイアウト
エンゼルフィッシュの水槽のレイアウトでは、同種との群泳を好む熱帯魚なので、5~10匹程度まとめて飼育してあげましょう。
体の高さがあったり、長いヒレを活かすために、中央部には十分に泳ぐスペースをとってあげてくださいね。
レイアウトでおすすめの水草はアマゾン産のアマゾンソードプラントやアズレアです。産地を統一する事で一体感のあるレイアウトを作る事ができます。特にアマゾンソードプラントは初心者にも飼育しやすい水草で、エンゼルフィッシュが産卵床としても使ってくれる水草です。
細身の熱帯魚なので、重厚感のある流木や石組みは似合いません。アクセントとして少しだけ使いましょう。流木や石組みをするときは体が傷つかないように、角が丸くなっているものを選びます。
飼育に適している水温と水質
エンゼルフィッシュに適している水温は25度〜28度です。
低水温に弱いので、冬は23度を下回らないように水槽用のヒーターが必要です。水量が少ない小型水槽であれば、水温変化が激しい春と秋にもつけておいたほうがいいですよ。
基本は水温を27度に保つことで、病気予防と成長促進につなげます。
電気代は60cm水槽でヒーターは150w、月の電気代は1000円、90cm水槽でヒーターは300w、月の電気代は2000円程度です。
適している水質はph5.0~7.0の弱酸性を好みます。適温範囲が広いので、あまり神経質になる必要はありません。弱酸性が保てるように、底砂をソイルにしたり、流木をたくさんいれてあげることで元気になってくれますよ。
おすすめの餌と与え方
エンゼルフィッシュは餌の好き嫌いが少なく、なんでもよく食べてくれます。
主食には栄養価が高い帯魚専用餌をあげてください。テトラプランクトンなどの沈下性の人工餌がおすすめです。おやつに冷凍アカムシやイトミミズといった生餌をあげると喜んでくれますよ。
餌の頻度は1日2回、1〜2分で食べきれる量を与えてください。
餌を食べないときはストレスを抱えており、体調が悪い事が考えられます。まずは最初に水温と水質が適切な数値になっているか確認します。次に病気にかかっていないか、泳ぐ方がおかしくないか、別の魚にいじめられていないか確認しましょう。
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混泳に向いている
エンゼルフィッシュは幼魚のときはおとなしい性格をしていますが、成長するにつれて気性が荒く喧嘩が増えてくる熱帯魚です。また、体も大きいので食べられる大きさの小型熱帯魚は注意が必要です。
混泳相手はコリドラス、グラミー、コンゴテトラ、プラティなどエンゼルフィッシュよりも体が小さくて、温和な性格の熱帯魚がおすすめです。
エンゼルフィッシュの混泳で紹介していますので、ご参考ください。
かかりやすい病気と治療方法
エンゼルフィッシュは水質の悪化に弱いので、病気にかかりやすいです。狭い小型水槽で群泳しているときは水質悪化が早いので注意してください。
かかりやすい病気は白点病と尾ぐされ病です。
白点病 | 全身が白い点々に覆われる病気で、ショップですでに感染していることが多いです。感染力が強いので、またたくまに水槽中の熱帯魚に伝染していきます。発症している固体を見つけたらすぐに別の水槽に隔離して、メチレンブルーで薬浴してください。 |
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尾ぐされ病 | ヒレの先端が白く濁り、徐々に溶けていく病気です。原因は水質悪化によって水槽の中にカラムナリス菌が繁殖したことです。すぐに水槽の水をすべて交換して、グリーンGゴールドで薬浴してください |
エンゼルフィッシュの繁殖方法
エンゼルフィッシュの繁殖はペアを作るのが少し難しいですが、初心者でも十分に繁殖を狙うことができます。
オスとメスの見分け方はプロでも難しいので、最初から10匹程度購入してきて、自然とペアになるのを待つ必要があります。
生後1年で成魚になり産卵が可能になります。熱帯魚店で販売されているエンゼルフィッシュは生後4ヶ月くらい個体が多いので、ペアができるように10匹程度を購入して、半年くらい群泳させましょう。
ペアになると寄り添って泳ぐようになるため、ペアになったかな?と思ったら2匹を別の水槽に移動させてください。そこに産卵筒やアマゾンソードなどの葉幅の広い水草をいれておくと100個程度の卵を産んでくれます。
産卵後の対応
産卵後はなるべくストレスを感じさせないように、観察する頻度を少なくして、照明のオンオフも最小限にしてください。
白くなっている卵は無精卵なのですぐに取り除きます。放置していると水カビが発生して、他の卵に悪影響を与えてしまいます。
卵をたべる原因
水質の悪化や人間がむやみに近づくとストレスを感じて卵を食べてしまいます。また初産でも食べやすいので慣れてくるのを待ちましょう。
稚魚の育て方
エンゼルフィッシュはペアで稚魚の世話をするため、稚魚を親魚から隔離する必要はありません。むしろ親が稚魚を守ろうとするため、あまり手を出さないようにしましょう。
だいたい3日程度で孵化がはじまり、そこから5日後に自分で泳ぎ始めます。稚魚の餌は栄養価が高いブラインシュリンプを与えてあげてくださいね。
稚魚は水質の変化に弱いので水換えは極力行わずに飼育しましょう。水質悪化が進んだら少量の水をコップですくい、ストレスを与えないように水を交換していきます。
生後4ヶ月ほどしたら他の熱帯魚とも混泳することができますよ。
エンゼルフィッシュについてまとめ
今回はエンゼルフィッシュの生態や飼育方法についてまとめてみましたが、いかがでしたでしょうか。
エンゼルフィッシュはその体高の高さと、ヒレの長さで優雅な存在感を示してくれます。飼育するときは水質の悪化に弱いので、こまめに水換えをすることを忘れないでください。また、結構大きくなる熱帯魚ですので小型魚との混泳は注意が必要です。
なんども餌を与えて慣れた個体は、顔を近づけるだけで寄ってきてくれる可愛いところもあるので、大事に育ててあげてくださいね。
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