メダカをビオトープで飼育すると、自然の環境に近くなり、メダカ本来の生活を観察できたり、美しい営みをみせてくれるようになります。
今回はそんなメダカの魅力をたくさん引き出せるように、ビオトープ飼育のコツを詳しく紹介していきます。
メダカのビオトープってなに?
ビオトープとはbio(命)とtope(場所)を組み合わせた言葉です。水草や生き物がお互いに助けあって、自分たちの力で生きていける自然の環境をさしています。
メダカのビオトープは場所も取らず、ベランダなど狭い範囲でも楽しむことができるため、人気が高まってきています。
メダカのビオトープと水槽の違いは?
ビオトープの魅力は自然環境のそのままの姿を楽しめることです。
ほとんど手を加えなくても水が綺麗に保たれて、メダカは元気に泳いでいます。人が近くと驚いて隠れてしまうのもいいところ。そういった野生の姿に癒しを感じることができます。反対に冬は観察することが難しいのが残念ですね。
水槽飼育だと冬でも飼育を楽しむことができます。しかし、ビオトープに比べると人に慣れてしまい、野性味が失われたりします。観賞魚として楽しむなら水槽がおすすめでしょう。
メダカにとってビオトープはいい環境?
メダカは室内飼育よりもビオトープの方が飼育が簡単です。
屋内で飼育しているとなかなか産卵してくれなかったメダカも繁殖をし、稚魚を簡単に育てることができます。
これは太陽の光がメダカの繁殖をうながし、稚魚の餌になる植物性プランクトンを発生させるからです。さらに、水を綺麗にしたり、酸素を出してくれる水草が元気よく育つので、メダカにとって良い環境になるんですね。
メダカの繁殖方法で詳しく紹介しているので、ご参考ください。
メダカのビオトープの完成形は?
ビオトープは生き物同士が助け合い、人の手を加えずに、環境を維持し続けることが理想とされています。
メダカたちは春になったら自由に繁殖をし、冬になったら越冬のために静かに過ごします。餌は水槽内に自然に発生するプランクトンや微生物を食べ、フンや水の汚れはバクテリアが分解したり水草が栄養分として吸収してくれます。
ふと水槽を見てみると、群れで仲良く泳いでいたり、赤ちゃんがいたり。まさしく自然の池が身近にあるように感じることができますよ。
ビオトープにおけるそれぞれの役割
ビオトープをより自然に近づけるために、それぞれにどのような役割があって、水の維持に役立っているのか紹介します。水槽のレイアウトではこれらのものを揃えることが大切です。
水草 | 水を綺麗にしてくれたり、酸素を供給してくれます。日陰ができるので、水温の上昇を防ぎます。メダカの隠れ家や休憩場所になります。 |
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雨 | 水槽内の水を増やしてくれます。夏場はとくに水が減りやすいので、雨が降らない時は足し水をしてください。反対に大雨が降るとメダカが流されてしまうので、蓋をしておきます。 |
底砂 | 底砂には水質の維持に必要なバクテリアが繁殖しやすいです。園芸用の赤玉土を使うことが多いです。 |
メダカ | ビオトープに繁殖しやすい蚊の幼虫などを食べてくれます。メダカのフンは水草の栄養分になります。 |
タニシ | ビオトープで発生しやすいコケを食べてくれます。 |
メダカのビオトープにおすすめの時期は?
メダカのビオトープの立ち上げ時期は気温が10度を超える春がおすすめです。4月頃が目安になります。そこから10月までは元気な姿で泳ぐ様子を見ることができますよ。
気温が低い時期に作業をするとメダカの体に負荷をかけてしまいます。また、越冬前には飼育者がビオトープでの生活に慣れておく必要があるからです。
水温が暖かくなる春から夏はビオトープで飼育して、秋から冬は室内飼育にすると、ずっと鑑賞を楽しむことができます。
冬のメダカのビオトープはどうするの?
メダカは低温に強いので、冬でも問題なくビオトープで飼育することができます。ただほとんど動かずに、水底でじっとしているので観察には適していません。
落ち葉などに身を隠して温めるので、入れてあげてください。入れすぎると水質が酸性に傾くので注意しましょう。
水全体が凍ってしまわないように水深15cm以上の容器に移して水量には注意してくださいね。簡易のビニールハウスを作るとこで水温の下がりすぎを防止することができます。メダカの冬の水温対策で詳しく紹介しているので、ご参考ください。
メダカのビオトープにおすすめの容器
睡蓮鉢(スイレン鉢)
睡蓮鉢は屋外でメダカを飼育するときに使う代表的な容器です。
睡蓮鉢は見た目が綺麗で鑑賞に向いており、メダカの飼育数が少ないなら問題ありません。また、丈夫なのでベランダや玄関先など、置き場所に困りません。水量は少ないですが、横幅が狭いですが、高さがあるので、冬に水が全て凍るのを防ぎやすく、越冬に適しています。
欠点は水草を入れると、上から観察するスペースが少なくなってしまうことです。
発泡スチロール
発泡スチロールはビオトープで最も使いやすい容器です。耐熱性と保温性に優れており、夏場や冬場の水温対策が楽になります。値段が安いので、メダカを繁殖させて、たくさんの容器で飼育することができます。
デメリットは耐久性が低いので、水を入れた状態で容器を移動させることが難しく、5年ほどすると新しい容器に移し変えなければいけません。
プランター
ガーデニングに使うプランターは底にフタをして、水を溜めれば使うことができます。ベランダなど狭い範囲でやるときに便利です。
プラ舟
プラ舟はホームセンターで販売されています。水量が確保しやすく、水質が安定します。また、容器が丈夫なので、庭などの広い場所でのビオトープに使われることが多いです。
ひょうたん池
ひょうたん池は独特な形状で、庭の小さな池のようなインテリアとして使うことができます。丈夫で扱いやすいです。
インテリア水槽
インテリアガラス水槽は円形や楕円形のおしゃれな小型水槽が販売されています。水槽でなくとも大型のコップやお皿でも代用できます。これを上手に使って室内飼育のミニビオトープを作ることができます。手軽に涼みたいときにおすすめです。水量が少ないので、寒くなる秋や冬は通常の水槽に移動させてあげてくださいね。
メダカのビオトープの作り方
ビオトープの作り方はとても簡単で、一般的な水槽の立ち上げ方と同じです。
立ち上げたばかりの水槽にはフンや餌の食べ残しなどの有害物質を無害な物質へ分解するバクテリアがいません。最初は生体の数を1〜2匹に抑えて、週に1回は換水します。2週間経過したら徐々に飼育数を増やしていきます。
作成の手順
- ビオトープの置き場所を決める
- 土を入れる
- 水草を植える
- 水を入れる
- 水の濁りがおさまるのを待つ
- メダカをいれる
水槽の立ち上げ方で詳しく紹介しているので、ご参考ください。
ビオトープにおすすめのメダカの種類
メダカの種類は、より自然に近い環境を目指すのであれば、日本の野生種であるクロメダカがおすすめです。
オレンジ色のヒメダカでも十分に飼育が可能ですよ。他の種類はビオトープでの飼育に向いていないので、さけておきましょう。
メダカの飼育数
飼育数は水5リットルに1匹を目安です。自然に繁殖していくので、最初は多くても5匹程度におさえておくといですよ。
おすすめの水草
ビオトープにおすすめの水草は、飼育が簡単で日当たりがあるとしっかりと成長して酸素を出し、水中の養分を吸収してくれる種類です。ここではそんな水草を紹介します。
スイレン | メダカと一緒に飼育されることが多い代表的な水草です。きれいな花が咲くので、人気が高いですが、日当たりがとても大事になります。植え方は株が土から5cm〜10cmは埋まるようにしてください。寒さに強いので水が凍らなければ越冬することができます。 |
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浮き草 | 田んぼや小川によく浮いている小さな水草です。2〜3個ほど採集してビオトープにいれておくと爆発的に増加してくれます。 |
アナカリス | 非常に丈夫な種類で成長も早いので、水槽に溜まった栄養分をどんどん吸収して育っていきます。そのため水の洗浄力はかなり高いです。屋外飼育だと十分な日光があるので、かわいい花をつけてくれることがありますよ。こちらも越冬できる水草なので、冬にもいれてあげくださいね。 |
水草をいれるメリットやデメリット、おすすめの水草についてはメダカの水草で紹介しているので、ご参考ください。
水槽の置き場所は?
ビオトープ水槽の置き場所は水温差と水の蒸発を避けるために、直射日光が当たらない日陰においてください。
あまりにも暗い環境だとビオトープに大切な水草が成長しないので、適度な光も必要です。場所はベランダや庭、ガレージ、窓際がおすすめです。
メダカの水合わせの方法
ビオトープの準備ができたら水合わせをしてメダカをいれましょう。
古い水と新しい水では、水温と水質に差があるので、慣らすために時間をかける必要があります。
メダカをバケツに移動させ、1/4ほどの水を捨てて、ビオトープの水を追加します。これを4回ほど1時間かけて繰り返していきます。
メダカのビオトープでの餌のあげ方
メダカのビオトープを立ち上げたばかりの時は、餌になるプランクトンが発生していないので、1日1回は市販のメダカの餌をあげます。
1ヶ月も飼育していると容器に苔が増えてきて、プランクトンが発生するので、餌の頻度を落としてかまいません。
だいたい週に2回、1〜2分で食べきれる量をあげるといいでしょう。飼育数が少なければ餌なしでも大丈夫です。
餌の種類や与え方についてはメダカの餌で詳しく紹介しているので、ご参考ください。
ビオトープで一緒に飼える生き物は?
ビオトープだとどの生き物も積極的に繁殖を行うので、増えすぎないようにメダカだけで飼育してあげるのがおすすめです。まれにヤゴが侵入することがあるので注意してください。
別の生き物を入れるときは、隠れ家になる水草を用意してあげましょう。
ここでは春〜夏にかけて混泳が可能な生き物を紹介します。
ドジョウ
どじょうは水底で生活するので、メダカと生活層がかぶらずに相性がいいです。また大きくなってもメダカが食べられる心配がありません。
どじょうの種類で紹介しているので、ご参考ください。
ミナミヌマエビ
ミナミヌマエビはビオトープでコケ取り用として入れられることが多いです。元気なメダカを襲うことはありませんが、弱っていたり稚魚だと注意が必要です。ザリガニはどれだけ小さくても入れないようにしてくださいね。
ミナミヌマエビの飼育方法で紹介しているので、ご参考ください。
タニシ
メダカのビオトープでもっとも多く入れられている生き物で、冬を越すこともできます。あまり多く入れると水草をかじるようになるので、1〜2匹ほどに抑えておきましょう。
メダカのビオトープの掃除方法
メダカのビオトープではほとんど掃除は必要なく、1年は水足しだけで問題ありません。
水草や苔が生えすぎると、水草に光が届かなくなるので、たまにコケを掃除したり、増えすぎた水草を間引いてあげましょう。
底砂に溜まった糞は水草が栄養として吸収してくれるので、取り除く必要はありません。
立ち上げて2年ほど経過したら全換水を行いましょう。全換水の方法はとても簡単です。
水槽掃除の手順
- メダカ飼育水ごとバケツに移動させる
- 水草を取り除く
- 砂利を水道水で洗う
- 水草や石を水道水で洗う
- バケツの飼育水を1/3ほど戻す
- カルキ抜きした水道水を容器に入れる
メダカのビオトープで越冬する方法
メダカのビオトープで越冬をするときは、気温が低くなる秋から準備を始めます。
水温が15度下回ると運動量が減り、餌を食べなくなるので、徐々に餌の量を減らしてください。冬に10度を下回ると餌を食べないので、与えなくて大丈夫です。
冬は水が完全に凍らないように、水深は最低でも30cmはある飼育容器を用意してください。保温効果のある発泡スチロールにしておくと安心です。寒冷地では水が氷るので、諦めて室内飼育に切り替えましょう。
水底には隠れ家になる落ち葉や水草を入れておき、ゆっくりと休めるようにしておきましょう。
冬に水換えは必要ありません。メダカを起こして体力を消耗してしまうので、絶対に水換えはしないでくださいね。
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