ベアタンクという飼育方法をご存じでしょうか。シンプルなレイアウトをしているため、味気ない印象を受けます。しかし、ベアタンクには大きなメリットがあり、熱帯魚店だけではなく自宅でも使いやすい便利なレイアウトです。
今回はそんなベアタンク水槽のメリットやデメリット、おすすめの熱帯魚、水草など詳しく紹介していきます。
ベアタンクとは?
ベアタンクとは、水槽に底砂を敷かないレイアウト方法の一つです。英語では底がむき出しの水槽という意味で、「bare bottom tank」と書きます。
ベアタンクの水槽では、底砂だけではなく、流木や石、水草などのレイアウトもあまりしません。水槽と魚、ろ過フィルター、バックスクリーンだけのシンプルな状態が多いです。
ベアタンクにするメリット
ベアタンク水槽で飼育するメリットについて紹介していきます。
水換えが簡単
ベアタンクの水槽ではフンやゴミが底砂に埋もれることがないので、ホースで簡単にフンを吸い出すことができます。
また、レイアウトがシンプルなので、コケはガラス面にしか付着せず、スポンジで簡単にこすり落とせます。多少荒々しく掃除をしても、レイアウトを崩す心配がないもの良いところです。
底砂があるとフンが砂に埋もれて見えず、ホースでゴミを吸い取るときは、レイアウトを気にしながら手当たり次第にやらなければいけません。底砂の気になるゴミを吸い出しているうちに、水槽の水が予想以上に減ってしまったということもあるため、ベアタンクではない水槽の水換えは神経を使います。
フンの量が多い環境に向いている
ベアタンクの水槽では水換えが簡単なので、フンの量が多い肉食魚やコイなどのたくさんの餌を食べる生き物の飼育に向いています。他にも大量の生き物を飼育する過密飼育にも向いています。
通常の水槽ではバクテリアがフンを無害な物質に分解してくれますが、フンの量が多い環境では、分解速度が間に合いません。この環境ではバクテリアに頼るのではなく、水換えで水質を維持することが大切です。
ベアタンクにするデメリット
水換えをしないと水質が維持できない
水槽にはバクテリアと呼ばれる細菌が生息しており、水質の維持にはバクテリアの存在が必要不可欠です。
バクテリアとは、生き物のフンや餌の食べ残しなどの有害物質を無害な物質に変えてくれる細菌です。バクテリアがいない水槽はすぐに水質悪化して、生き物が住めなくなります。
バクテリアが繁殖しやすい場所はろ過フィルターのスポンジや底砂です。ベアタンク水槽では底砂がないのでバクテリアの数が少なく、水質の維持は難しくなります。
ベアタンクは水槽の水換えの頻度を減らしたい方には向いていません。
底面フィルターは使えない
底面フィルターは水底に設置するろ過フィルターです。底砂をフィルター代わりに使うことで、小型水槽でも強力なろ過力を発揮できます。
しかし、ベアタンク水槽では底砂がないため、ろ過をすることが出来ません。
ベアタンク水槽では外掛けフィルターや上部フィルター、投げ込み式フィルターを使いましょう。
ビオトープは難しい
ビオトープとは、水草や生き物がお互いに助けあって、人間が水槽に手を加えなくても維持できる環境のことです。屋外飼育で手間をかけられない、メダカや金魚で多い飼育方法です。
ベアタンクでは水槽の水換えをしないと水質が維持できないため、ビオトープとはほど遠い環境です。ビオトープをするときは必ず底砂を入れておきましょう。
メダカのビオトープの作り方で紹介しているので、ご参考ください。
レイアウトがシンプルになりすぎる
ベアタンク水槽では水底がむき出しになるので、人工的な違和感があります。そこから自然環境に似せるレイアウトは難しく、シンプルなものになりがちです。
また、底砂には弱酸性を維持する砂、弱アルカリ性を維持する砂など、飼育する魚にとっては重要な役割を果たす底砂があります。弱酸性を好んでいる熱帯魚には、弱酸性を維持できる「ソイル」を使うことで、美しい体色を見せてくれるようになります。
ストレスで体色が薄くなることがある
ベアタンクの水槽では、熱帯魚の体色が薄くなることがあります。底面がライトの光が反射し、下からの光を嫌がる熱帯魚はストレスを感じてしまうからです。
魚の色が薄くなるのを防ぐために、水槽の底に黒色を板を貼り付けて反射を防ぐ必要があります。オーダーメイドが必要な場合もあるので、薄く底砂を敷いて対策することが多いです。
ベアタンク水槽に向いている生き物
アロワナ・スネークヘッドなどの肉食魚
アロワナやスネークヘッドなどの肉食魚はベアタンク水槽にとても向いています。
肉食魚が食べる餌は金魚やメダカなどの生き餌が多く、餌の食べ残しが急速に水質を悪化させていくからです。さらにフンの量が多いので、バクテリアの生物ろ過だけでは間に合いません。
他にもダトニオやピラニア、オスカー、フラワーホーンなどの遊泳する肉食魚におすすめです。
メダカ・金魚・鯉
特に金魚はフンの量が多いので、凝ったレイアウトをするよりも、ベアタンク水槽で水換えの頻度を増やす方が長生きさせやすいです。
また、水槽の掃除が簡単になるだけではなく、メダカや金魚は体が丈夫なので、水換えを怠ってもすぐに弱ることはありません。
ウーパールーパー
ウーパールーパーは視力が悪く、底砂を誤飲することがあるため、ベアタンク水槽での飼育に向いています。
どうしても底砂を敷きたいときは、飲み込めない粒の大きさの底砂にするか、飲み込んでも大丈夫な小さい粒を選びます。
アカヒレ・グッピーなどの熱帯魚
アカヒレやグッピーなど、中層~水面付近を泳ぐ熱帯魚はベアタンクに向いています。
特にグッピーは繁殖しすぎて過密飼育になりがちなので、そのときはベアタンクにして、水換えの頻度を増やさないといけません。
他にはネオンテトラやプラティ、ラスボラ、グラミー、エンゼルフィッシュもベアタンクで飼育できますよ。
ディスカス・淡水フグなど生の餌を食べる熱帯魚
ディスカスが好んでいる「ディスカスハンバーグ」や、淡水フグが好んで食べる「冷凍アカムシ」などの生(なま)の餌は水につけただけで、水質を悪化させていきます。
餌の食べ残しもすぐに取り除かないといけないので、水換えをしやすいベアタンクでの飼育が好まれています。
ベアタンク水槽に向いていない生き物
ミナミヌマエビやビーシュリンプ
ミナミヌマエビやビーシュリンプなどのエビ類はベアタンク水槽の飼育に向いていません。
水底がガラス面では滑って上手に歩くことが出来ないからです。反対に水草や流木など掴まれる場所を多く入れておけば問題ありません。
コリドラスなど水底に生活する生き物
コリドラスはベアタンク水槽で飼育できますが、おすすめできません。
コリドラスは底砂に埋もれている餌を口先で掘り出す習性があり、底砂がないとその習性を楽しむことが出来ないからです。底砂がないことで死ぬことはありませんが、観賞用に飼育するのであれば、底砂はぜひいれてあげましょう。
ベアタンクにおすすめの水草
ベアタンク水槽では底砂がないので、砂に根を埋めないといけない水草は使えません。
おすすめの水草は浮かべておいても育つアナカリスやカボンバです。水草ポットを使って、束ねて沈めておくといいでしょう。他にも流木に活着できるアヌビアスナナやミクロソリウム、ウィローモスも使えます。
ベアタンク水槽についてまとめ
ベアタンク水槽はレイアウトが単純になってしまったり、水換えをしないと水質を維持することができません。
しかし、肉食魚など水質を悪化させやすい生き物を飼育するときには役立つ選択肢の一つです。飼育する熱帯魚の種類や、生き餌を大量に過密飼育するときなど、使い分けるメリットは計り知れません。
水質の維持が難しいと判断したら、ベアタンクに切り替えて、水換えの頻度を増やすのも良いでしょう。上手に使い分けてくださいね。