ホンソメワケベラは他の魚についた寄生虫を食べる海の掃除屋として知られており、水族館の大型魚用水槽でもよく見られる生き物です。その姿をよく見てみると、綺麗でかわいい顔をしており、観賞魚としても人気があります。
今回はそんなホンソメワケベラの生態や特徴、そっくりな偽物、天敵、値段、餌など飼育方法について紹介していきます。
ホンソメワケベラの特徴
ホンソメワケベラはスズキ目ベラ科カンムリベラ亜科に分類される海水魚です。英名ではLabroides dimidiatusでラブロイデスディミディアトゥスと書きます。生息地は太平洋やインド洋の広大な海域に分布しており、どこの海でも見つけられます。
幼魚の頃は黒色をベースに青色のラインが入っていますが、成長すると白色をベースに黒色のラインへと変色していきます。
ブダイの仲間と同じように、寝るときにはサンゴや石の隙間に入り込み、体の周りを薄い粘膜で包むことによって身を守ります。
全てのホンソメワケベラはメスの性別で生まれてきて、グループ内でもっとも大きな個体がオスに性転換して繁殖します。クマノミの仲間も同様の性転換の仕組みがあり、オスのグループで一番大きな個体がメスになります。広大な海で繁殖相手に出会うのが難しいので、このような繁殖形態をとっていると考えられています。
体の大きさ
ホンソメワケベラの体の大きさは最大でも8cmと小型魚です。
寿命の長さ
ホンソメワケベラの寿命は平均して3年です。水槽飼育では餌不足になりやすく、長生きさせるのは難しいです。
他種と共生するホンソメワケベラ
ホンソメワケベラはとがった口先で、他の魚の体表や口の中についている寄生虫やゴミ、粘膜、粘液を食べることから、海の掃除屋として知られています。
ホンソメワケベラには天敵がおらず、肉食魚に食べられることはありません。体についた寄生虫を食べてもらうのはとても気持ちよく、掃除してくれることを知っているからです。獰猛な肉食魚であるウツボやサメの口の中でも関係ありません。
ニセクロスジギンポとの違い
ホンソメワケベラと似ている偽物の魚にニセクロスジギンポという魚がおり、ホンソメワケベラモドキと呼ばれることがあります。ホンソメワケベタに擬態して他の魚に近づくことで、ヒレや皮膚などを囓りとって食べてしまう肉食性の魚です。
違いはホンソメワケベラは口先が前を向いていますが、ニセクロスジギンポは下を向いているので、注意深く観察することで見分けることが出来ます。
ホンソメワケベラは高い知能を持っている?
ホンソメワケベラは極めて高い知能を持っていることがわかっています。
生物の知能を測るためにミラーテストと言われる、鏡に映った姿を自分と認識できるのかの実験が行われました。方法は体に今までついていなかったマークをつけることで、それを触ろうとしたり気にする様子が出てくるかどうか観察します。
サルの仲間やイルカなど高い知能があると知られている生き物しかその行動をとりませんでしたが、ホンソメワケベラも鏡を見ながらマークを気にする様子が観察されました。
寝るときに粘膜を張ることから、体に寄生虫がついているかどうか気にする能力があると考えられており、魚でも高い知能があると判明し、新たな研究が進み出すきっかけを作りました。
ホンソメワケベラの飼育方法
ホンソメワケベラは人工餌への餌付けが大変ですが、病気などにもかかりにくく、そこさえクリアできれば飼育は難しくありません。
複数の海水魚を飼育している水槽で、掃除役として入れるのがおすすめです。
飼育に必要な水槽と器具
ホンソメワケベラは小型の海水魚ですが、遊泳力があるので、横幅で最低でも60cmの水槽が必要になります。他の魚と混泳させることが多いので、90cm水槽か120cm水槽での飼育が一般的です。
ろ過フィルターは上部式フィルターを使います。蛍光灯は光量が強い2灯式のものを使うと、綺麗で鑑賞が楽しくなりますよ。
水槽からの飛び出し事故が多いので、隙間がないようにしっかりと水槽の蓋をしておいてくださいね。
飼育水については人工海水の作り方で詳しく紹介しているので、ご参考ください。
水槽のレイアウトはどうする?
ホンソメワケベラは寝るときに岩の隙間に入り、体の周りを膜に覆う習性があるため、ライブロックやサンゴなどをいれて寝床を作る必要があります。
水槽内をせわしなく泳ぎ回るので、水流は強めにしておきます。
値段と販売場所
ホンソメワケベラの値段は500円~1500円で販売されています。
人気の海水魚ではないので、販売しているお店は簡単には見つかりません。海水魚に力を入れているペットショップか、なければネット通販を利用しましょう。
餌付けが大変なので、最初から人工餌に餌付けされている個体を購入しておくと、その後の飼育が楽になりますよ。
適している水温
ホンソメワケベラに適している水温は22度~27度と低めの水温を好んでいます。
冬は水中用のヒーターを設置して、26度に設定します。おすすめの水槽用のヒーターで紹介しているので、ご参考ください。
30度を超える夏は冷却ファンで水温を下げてあげましょう。
商品情報と価格をチェック
餌と与え方
ホンソメワケベラは飼育下では海水魚用の人工餌を与えます。
餌付けが大変なので、慣らすのに時間がかかります。最初は冷凍餌であるホワイトシュリインプなどのエビ類の餌を与え、徐々にメガバイトレッドなどの小さい粒状の人工餌に切り替えていきましょう。
餌の頻度は1日2回を目安に与えます。混泳相手が多いと、餌不足になりやすいため、しっかりと食べているか確認してください。
商品情報と価格をチェック
混泳の注意点
ホンソメワケベラは他の魚からも掃除屋として認識されているので、小型魚から大型の肉食魚までどんな相手とも混泳水槽で活躍します。
特に中型魚の飼育数が多い水槽では魚の体を綺麗にしてくれるクリーナーフィッシュとして重宝されています。
しかし、クマノミなど小型魚と比べると、体が少し大きいため、主役を奪うほど存在感が出てきてしまいます。どの魚を主役にするのかは決めておきましょう。
ホンソメワケベラについてまとめ
今回は海の掃除屋さんとして知られているホンソメワケベラについて紹介していきましたが、いかがでしたでしょうか。
掃除屋だけではなく、性転換、寝るときに粘膜を張る、高い知能を備えているなど、珍しい力をたくさん持っている不思議な生き物です。それを真似する偽物まで出てくるほど・・
観賞魚としても一般的で、他の魚の体を綺麗にしてくれるクリーナーフィッシュとして飼育されることが多いです。
餌付けが難しいので、餌不足で餓死してしまわないようにだけ注意しておきましょう。
すでに海水魚を飼育している方にとっては最高のタンクメイトですので、興味を持たれた方はぜひ飼育に挑戦してみてくださいね。